砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「だって……私、また失敗しちゃった……。
 これじゃ、全然役に立てないよ」

 ほっとしたのか、毬の黒い瞳からぽろぽろと涙が零れ始める。
 あの傷の痛みにすら、泣かなかったのに。
 人質の恐怖にすら、耐えていたのに。

 龍星は言葉の途中でもう一度、毬の唇を奪った。
 息も出来ないほど、強く。

 龍星には想像できなかった。
 まさか、あの状態で毬が責任を感じていたなんて。

 しかも、その小さな胸を泣くほどに痛ませていたなんて。

 毬は、真っ先に人の心に想いを馳せてくれたというのに。痛む身体まで押して。


 これでは、どちらが大人なのか分かったものじゃないな、と。
 愛しい人の唇を深く奪いながら龍星は心で苦笑する。

「それこそ、毬のせいじゃない」

 ようやく唇を放して龍星が言う。

「だから、謝らないで」

 心から頼まれて、毬はしゃくりあげながら、ようやく小さく頷いた。
 龍星は膝を伸ばし、毬を腕の中に抱き寄せた。



「……毬姫」

 咳払いして、足を二人のほうに進めながら帝が言う。

「それ以上ここで龍星を欲情させてはいけないよ?
 雅之が目のやり場に困っているから」

 龍星はようやくその紅い唇に意味ありげな笑いを乗せて、帝を見た。

「いいじゃないですか。雅之に見せ付ける趣味は無いですが、あなたになら最後まで見せても構いませんよ」

「残念だが、そういう趣味はないんでね」

 帝は龍星の挑発を、肩を竦めて聞き流す。