夕食の準備が整うまで、楽しそうに白と戯れていた毬だが、夕飯の席に着いた頃には目に見て分かるほどに落ち込んでいた。

「毬」

 龍星が心配して、声を掛ける。

「今日は、食欲無い?」

 ふるふると、首を横に振り毬は半ば無理矢理夕食を喉に流し込む。

「明日のことが、心配?」

 龍星の、砂糖蜜を混ぜ込んだような眼差しに見つめられ、毬は再び首を横に振る。

「それは大丈夫。
 凄腕陰陽師様が私の味方だもの、ね?」

 毬は少しだけ冗談をこめて、そういって口角を上げてみせた。
 力の入らない、愛想笑いが龍星の心臓をぎゅっと掴んで離さない。

「御台様に言われたこと、気にしてるの?」

 何を言われたのか、詳しくは知らないが龍星の想像を裏切ることはまず、ないであろう。
 毬は困ったような目をして、再び首を横に振る。

 龍星は箸を置いて、そっと毬の頬に手を伸ばす。
 毬も仕方なく、箸を置く。