砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「何があったんですか?」

 堅苦しい長々とした挨拶も抜きに、帝に向かってすぱっと言葉が出るのが龍星だが、このときばかりはそれが吉と出た。

「右大臣が、朝から一人で私のところにやってきた。
 自首する、と」

 帝が声を潜めて言う。

「良かったじゃないですか」

 さらりと返す龍星に、帝は顔を顰める。

「龍星、今は戯言を交わしている場合ではない。
 お前、本当にそう思ってるのか?
 あのキツネがただで自首すると?」

 わざわざネチネチ聞いてくる帝の口調にも、龍星は動じない。
 戯言を交わすのはお互い様だ。

「では、交換条件は何だと?」

「キツネの娘を我が側室に、だと」

 苦いものを吐き捨てる顔で、帝が言った。
 にこり、と龍星は優雅な笑みを浮かべる。

「良いではないですか。
 これで、御台様がいらっしゃらない間、退屈しないですみますね」

 早足で清涼殿へと向かっていた帝が、龍星の軽口にぎくりと足を止めた。