御所に着く頃には、龍星はいつもの龍星――すなわち、感情の見えない笑みを口許に絶えず携え、その瞳は漆黒の闇を切り取ったかのように底が見えない――に戻っていた。

 無断欠勤が続くことや、出勤時間が遅いことを咎めてくる人がいるわけでもなく。
 龍星は、当然のように陰陽寮へと足を進めた。

 龍星は優雅なそぶりで、しかし注意深く寮の中を見て回る。
 さして、変わったところは見当たらない。

「賀茂殿は?」

 そこに居た若い陰陽師へと言葉をかける。

「独房にいらっしゃいます」

 答えた若者は、何故か顔色が優れなかった。

「ここのところ、ずっと、か?」

「ええ。
 取調べは終わったので、後は処分が決まるまで近づかなくて良いと、私などは思うのですが」

 言葉を濁して感想を伝える。
 青年はなかなか、実直だ。

「そうか」

「いえ、賀茂殿が悪いと申しているわけではありません、決して」

 告げ口したと思われては困るとばかりに焦る青年の言葉に、龍星はふわりと、口許を緩めた。

「分かっている、そんなことは」

 取調べが終わったのに、賀茂が道剣に執着する理由……。
 龍星は知らず、その繊細な指先を紅い唇に当てていた。

 心当たりは、一つある。



 そう、自分に。