「それで、今日は何か?」

 二人のじゃれあうような会話が一段落したところで、龍星が問う。
 まさか、まだこんなに日の高い時間から酒を飲みに来たわけではあるまい。
 唯亮の件は、昨日一応話がついたはずだ。

「それなんだが」

 と、雅之は言いづらそうに一口お茶を飲む。

 カランカランと、風鐸が風が吹いたことを涼やかに告げた。

「賀茂殿の様子がおかしいんだ」

「賀茂の?」

 部下の名前がいきなりでてきて、龍星も目を丸くする。

「ああ、疲れているだけなのかもしれないのだが。
 今日、偶然御所ですれ違ったんだが……。
 あれは何か良くない気がしたもので。
 お前は、しばらく御所に行く気はないのだろう?
 でも、一度、見てきたほうが良いのではないか?」

 賀茂は、道剣のことを抑えられていないのではないかと、雅之は暗に告げていた。

 龍星は、ちらりと視線を毬に送る。
 二度と置いていかないと約束したばかりだ。

 愛しさを隠さない視線を真正面から向けられて、毬ははにかんだ。