真っ青な唇が震えだし、その瞳は明らかに何かに怯えていた。しかし、急速に部屋に漂う悪しき妖気の密度が高まっていくのを感じた龍星は、それに構うわけにはいかなかった。
「雅之。任せた」
物言いたげにすがりつく細い手を、強引に引き剥がす。心の奥が一瞬ひりと痛んだことには、気づかないふりをして。
「私に触れないで」
なんとか自力で土倉から出た毬は力を振り絞って、雅之を突き放そうとした。
その体格差故、強引に連れ去るのは造作もないことだったが、毬のただならぬ気迫に押され、雅之は毬から僅かに離れる。
「手は上に上げておいた方が良い」
雅之は青ざめながらも、必死に立っている毬にせめてもの助言をした。
毬は言われるがまま、血が滴り続ける手を目の前にあげ、空いている手で手首を強く握りしめた。
扉の向こうからは、龍星の呪文を唱える声が低く響いていた。
「雅之。任せた」
物言いたげにすがりつく細い手を、強引に引き剥がす。心の奥が一瞬ひりと痛んだことには、気づかないふりをして。
「私に触れないで」
なんとか自力で土倉から出た毬は力を振り絞って、雅之を突き放そうとした。
その体格差故、強引に連れ去るのは造作もないことだったが、毬のただならぬ気迫に押され、雅之は毬から僅かに離れる。
「手は上に上げておいた方が良い」
雅之は青ざめながらも、必死に立っている毬にせめてもの助言をした。
毬は言われるがまま、血が滴り続ける手を目の前にあげ、空いている手で手首を強く握りしめた。
扉の向こうからは、龍星の呪文を唱える声が低く響いていた。


