「毬姫!」
遠ざかりそうになる毬の意識を、芯のある鋭い声が呼び止めた。
毬は顔をあげる。同時に、手の痛みに顔を顰めた。
心配そうな龍星がそこにいた。
「鬼は?」
――鬼?
そうか。あれは、鬼だったのね。
「向こうへ」
毬は、土倉の奥を指差した。
「私がとどめを。
姫は、雅之と一緒に外へ」
短く言われて、ようやく隣にいる雅之に気付いた毬は、思わず龍星の着物を掴んだ。白めの布に深紅の血がじわじわと染みていく。
「嫌です」
遠ざかりそうになる毬の意識を、芯のある鋭い声が呼び止めた。
毬は顔をあげる。同時に、手の痛みに顔を顰めた。
心配そうな龍星がそこにいた。
「鬼は?」
――鬼?
そうか。あれは、鬼だったのね。
「向こうへ」
毬は、土倉の奥を指差した。
「私がとどめを。
姫は、雅之と一緒に外へ」
短く言われて、ようやく隣にいる雅之に気付いた毬は、思わず龍星の着物を掴んだ。白めの布に深紅の血がじわじわと染みていく。
「嫌です」


