砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「で、先ほどのは何だったのだ?」

 鞍馬山の傍も通り過ぎた後、ようやく雅之が問う。
 龍星が紅い唇に艶やかな笑みを浮かべた。

「おそらく、あの神主、御神体と会話を交わしたことなどないのであろうよ」

「……何?!」

 二人とも、行きよりは多少遅い速度で馬を走らせていた。
 雅之は、龍星の言葉に耳を疑った。

「だってお前、神主って言ったら……」

「別段、神と話すのが神主という決め事もなかろう。
 まぁ、俺が『神と話した』などと嘘をついていないとも限らないがな」

 一瞬、腹黒さを思わせる笑みが龍星の唇を彩る。

「まさか?!」

 相次ぐ戯言に、雅之はさらに目を白黒させる。
 龍星は、いたずらが見つかった子供さながらにくすりと口許を緩める。

「まぁ、真偽はともかく。
 俺が御神体と話したと言ったときの、神主の驚きようといったらなかったな。
 あれは駄目だ。
 神主を名乗るもの、ああいう場面では平然としてないと」

 動揺ぶりを思い出したのか、龍星がクツクツと喉の奥で笑う。
 それは、悪戯が成功した時の悪童の笑いにも、どこか似ていた。