腕の中で眠りに落ちていった愛しい姫の黒髪に、龍星はもう一度唇を落とした。
 こうして簡単に術を使ってしまうのは、良くないことなのかもしれない。
少なくとも毬は納得しないだろう。

 それでも。
 自分勝手と分かっていても、こうして一方的に好意を押し付けたくなってしまうのだ。
 毬の顔を見るたびに唇付けたくなる衝動を抑えられないのと同様に。

 龍星はもう一度ぎゅっと毬を抱き締めて心に積もる名残惜しさを振り払うと、そっと寝具から抜け出した。


 既に夜の内にいくつか式を放っている。
 今日はまずそれらから情報を聞き出すことから始めなければならなかった。

 

 長い一日になりそうだ。