砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 夜闇に包まれた屋敷ににわかに緊張が走る。

 毬ははっとしたように言葉を止めた。
 唇を噛んで、二の句がつけなくなっていた。

 龍星は穏やかな微笑を仮面のように浮かべたまま、淀みない声で言う。


「どうしても解決を急ぐというなら、明日、アイツをその身体に呼びだそうか?」

 感情の見えない、凪いだ海のような瞳が真っ直ぐに毬を見据える。


「出来れば、情報を集めてからと思っていたが。
 覚悟があるというなら、俺は今からでも構わない」

 鋭い刃物の切っ先を喉元に突き付けられたようで、毬は呼吸すら苦しくなった。

 ……いつもの龍とは、まるで別人。

 軽々しく口が利けないような、重い空気が龍星を包んでいる。


「毬」

 その声にはいつもの軽やかさなど微塵もない。

 先程、甘い唇付けを落としてくれたのと、同じ唇から出ている声だとは信じがたかった。
 手を伸ばすことすら躊躇う、冷たい空気を感じる。


 毬はギュッと自分の両手を握り締めた。