砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 二人の会話が途切れた頃あいを見計らったかのように、華が現れた。

「どうした?」

 龍星が、物言いたげな華に水を向けた。

「あの、毬様が。
 何も召し上がられなくて」

 華が困った顔でそう告げる。

 いつも冷静な龍星の表情に、ほんの一瞬苦悩の色が過ぎったことを雅之は見逃さなかった。




「龍星、お姫様のところに行って来いよ」

 龍星は躊躇いを見せた後、黙って席を立った。

「毬はどちらに?」

「部屋に篭られました」

 龍星は一人、毬が居るところへと足を進める。

 毬は暗い部屋で一人、黒猫をその胸に抱いていた。

「毬」

 声を掛けられて、ぷいと、そっぽを向く。

 ミャアオ!

 それまで大人しくしていた黒猫が突然声をあげ毬の膝を下り、龍星の傍を走り外へと出て行く。