砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 日がかなり翳ってきた頃。

 ここにまた、別の憂鬱を抱えた男、遠原雅之が安倍邸へと姿を現した。

 いつものように、華が丁寧に出迎えてくれる。
 しかし、屋敷の様子はいつもとは心なしか違う気がした。

 空気が沈んでいる、というか。

 実際、出迎えてくれた龍星は憂鬱そうな表情を隠さず、軽く微笑むだけだった。
 二人分しか準備されない膳を見て、ついに雅之は口を開く。

「毬は、また寝込んだ?」

 龍星は軽く息をついて、口許に浮かべた苦笑をそのままに口を開く。

「まぁ、似たようなものだ」

「何があった?」

 他人の事件はあっという間に解決するくせに、自分の中のものをいつまでたっても片付けようとしない親友に業を煮やした雅之が珍しく立ち入ったことを聞く。

 別に、と、そっけなく言いかけた龍星は、しかし、気を変えてその友人の優しさに緩やかな笑みを浮かべて言った。

「そうだな、食事が終わったら話すよ。
 その前に、そちらの悩みを聞かせてくれないか?」

「ああ」

 雅之は胸に抱えた憂鬱をぽつりぽつりと話し始めた。