砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 全てを拒絶するような冷たい背中を、毬は黙って見送った。

 ……怒らせたかった、わけじゃないのに。

 口に出せない言葉を飲み込む。

 龍星の言いたいことが分からないわけではない。

 でも。
 毬は震える指先に目をやった。

 じゃあ、いつまで?
 いつまで、私はこうしていたらいいの?

 見知らぬ誰かに、いつ乗っ取られるかも分からない恐怖に丸腰で挑めって、言うの?



 それなら、いっそ、仕事になんて行かないでずっと傍に居てくれればいいのに。

 なんて。
 龍星を困らせることも言いたくなくて。

 選びに選んだ、言葉だったのに。


「失敗、しちゃった」

 毬は最近可愛がっている黒い子猫の姿を庭先に認め、そう告げた。

 ミャアオ!

 子猫がとことこと、毬の元に歩み寄る。

「慰めて、くれるの?」

 子猫が膝に飛び乗った、その暖かさを感じた瞬間。
 毬の瞳から涙が零れた。