砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 ほんの刹那、思考と感情が彼女の中で戦っている間。
 傍観者にしかなれない龍星は、切なさを胸に閉じ込めてそっと彼女の額や眉間や鼻先や頬に、優しい接吻を落とした。


「繋がるんだ、毬が記憶をなくした時。
 いつも男装しているだろう?
 何か、それがより強い力を発しているんだと思う」

「分かったわ。
 実家に持って帰れば良い?
 それとも、燃やせば良い?」

 毬は潤んだ瞳を開き、それでも、きっぱりと言った。


「ここに、土倉があるからそこにしまって鍵と呪を掛けておきたい。
 いいかな?」

 毬はこくんと頷いた。
 感情を押し殺した瞳で。

 龍星は宥めるように毬を抱きしめ、その髪を梳くように撫でる。

「俺はどんな格好をしていても、毬のことが大好きだよ」

 滅多に恋を語らない美形陰陽師が、心のうちを真っ直ぐに覗かせた。
 毬は目を見開き、そして、はにかんだ笑顔を浮かべた。


 愛しい姫がようやく見せてくれた、心からの笑顔に龍星はつられて微笑んだ。