砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「それで、これからどうするんだ?」

 雅之は杯の中の酒を飲み干し、話題を変えた。
 龍星はその瞳に涼しそうな色を浮かべて答える。

「なぁに放っておいても明日の午後には先方のほうから呼び出しがあるさ。
 俺は今日一つ石を投げた。
 後はほうっておけば、その波紋が俺たちを招き入れてくれるだろうよ」

「そういうものか?」

 雅之は諦めて、投げ出すように言葉を放った。
 無意識に、ぐしゃぐしゃと頭をかき回している。
 龍星との会話はいつもこれだ。

 何かが掴めるような気になるのもつかの間。
 結局わけがわからないままに話が終わる。

 これがまた、時間が経てばこの時の龍星の言葉の意味が分かってくるから不思議なものではあるのだが。

 つまり、今はまだ、全貌を知る時期ではない、ということなのだろう。

「そういうものさ」

「雅之、明日も唯亮に逢うか?」

 雅之の部下であり、右大臣の息子を指して言う。
 立場をわきまえず人を呼び捨てにするのは、いつもの通り。雅之もその程度で驚いたりはしない。

「もちろん、物忌みでもない限り、逢うと思うが」

「悩みがあるようだったら、聞き出しておいてくれ。
 なければそれでいい」

「ああ、分かった」

 今は自分に出来ることを一つずつ、真剣にやるほかないようだ。
 少しつまらぬ気持ちを隠そうともせず、雅之は憮然と返事をした。