それなのに。
 今しがた、目が覚めたら、居てもたってもいられなくなった。

 心に浮かぶのは根拠の無い不安ばかり。


 帝の瞳を思い出せば、やはり自分を狙っているような気がする。
 そもそも、今もって彼に正妻しか居ないことはおかしいようにも思う。
 側室にしてやろうというのは、冗談ではなかったのかもしれない。


 ――だとしたら。
 この機会を逃すまいと、遠慮なく手を出してくるかもしれない。


 そう考えると何もかもが不安に思えてきて。
 そうしたらもう、頭の中には龍星のことしか浮かばなくなっていた。

 誰もが振り向く美貌を兼ね備えた、冷静沈着な陰陽師。
 どれほど忙しくても、毎日家に帰っては様子を伺ってくれる優しい人。
 慈しむような唇付けを幾度も重ねてくれるけれど、決してそれ以上は手を出さない。
 
 そんな関係が、このところずっと続いていた。
 これからもずっと続けばいいって思っていたのに。



 どうしてか、今のままでは、彼が永遠に手に入らないような気がして。
 もしかしたら、彼を手に入れる前に自分が誰かにさらわれてしまうかもしれない。



 どちらにしても。
 毬は、手を伸ばして声に出して、確かめずにはいれらなくなってしまったのだ。



 自分の気持ちと、龍星の気持ちを。
 

 そして、二人の将来を――