「……面白い裳着には応じられずとも、元服には応じるというのだな」
「それが本当のお望みであれば」
毬は、否、少年はようやく顔を上げた。
射抜くような強い眼差しで帝を見据える。
動じない、恐れない、なにものにも脅かされない立場を強調するようなひたすらに強い光を、その瞳に宿していた。
その瞳と、珍しく隠せないほど動揺している龍星を見比べ、帝は苦笑を浮かべる。
「本気で望む、と言いたいところだが。
その黒髪を今この場で奪うのはあまりにも惜しい。
それに、私もここで有能な陰陽師を失うわけにはいかないからな」
少年はその言葉に悔しそうに唇を噛む。
「それは、とても残念です
深い山に芽吹く新緑のごとく、いつまでも若くいらっしゃるような聡明なお方だと信じ、長い間お慕いもうしあげておりますのに」
「!!」
帝は息を呑んだ。
まるで、嵐山での常若、緑丸を知っているかのような物言いではないか。
この者は一体……。
「出すぎたことを申し上げて申し訳ありませんでした。
私がお役にたてることもないようですので、失礼させていただきます」
帝の返事も聞かずに少年は軽やかに立ち上がるとくるりと向きを変え、一足先に謁見の間を後にした。
「それが本当のお望みであれば」
毬は、否、少年はようやく顔を上げた。
射抜くような強い眼差しで帝を見据える。
動じない、恐れない、なにものにも脅かされない立場を強調するようなひたすらに強い光を、その瞳に宿していた。
その瞳と、珍しく隠せないほど動揺している龍星を見比べ、帝は苦笑を浮かべる。
「本気で望む、と言いたいところだが。
その黒髪を今この場で奪うのはあまりにも惜しい。
それに、私もここで有能な陰陽師を失うわけにはいかないからな」
少年はその言葉に悔しそうに唇を噛む。
「それは、とても残念です
深い山に芽吹く新緑のごとく、いつまでも若くいらっしゃるような聡明なお方だと信じ、長い間お慕いもうしあげておりますのに」
「!!」
帝は息を呑んだ。
まるで、嵐山での常若、緑丸を知っているかのような物言いではないか。
この者は一体……。
「出すぎたことを申し上げて申し訳ありませんでした。
私がお役にたてることもないようですので、失礼させていただきます」
帝の返事も聞かずに少年は軽やかに立ち上がるとくるりと向きを変え、一足先に謁見の間を後にした。


