砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 二人が到着すると、帝はすぐに人払いをし、御簾を上げた。

 毬は、もちろん龍星よりもさらに後ろに位置し、頭を深く下げ続けている。

「聞こえなかったか、そなた、顔をあげろ」

 帝はいつまで経っても顔を露にしない毬に、再度、強い言葉を投げた。

「いえ。畏れ多くも私のようなものにそのようなことは願いかないません。
 どうか、御簾をお下げください」

 声の調子さえいつもとまるで違う。

「毬、なのだろう?」

 あまりもの頑なな態度に、帝が一瞬戸惑いを見せた。

「昨日のお返事に参りました」

 答えようとしない毬に代わって、龍星が口を開く。

「……断る権利などないのだぞ」

 帝は苛々をそのまま、言葉にぶつけてくる。

「存じております」

 龍星は涼しい顔で答えた。

「しかし、無事、すべてが整った後、皆にどう申し開きをされるおつもりですか?
 まさか、真実をお話されるおつもりで?」

 帝は言葉に詰まった。
 無事に御子が生まれればそれでよかったわけで、それ以降のことなど案じてなかったというのが正直なところだ。