龍星が美少年を連れてきた、という噂はたちまち内裏中に知れ渡ることとなった。

「安倍殿、帝がお呼びです」

 陰陽寮について、あまり時間が経たないうちに使いのものが呼びにきた。

「承知した」

 いつもはすげもなく断るところだが、今日はそもそも出勤の目的が帝に逢うことなのでそうもいかない。
 龍星は渋々立ち上がる。
 
「そして、お連れの者も連れて上がられるようにとの、帝からのお達しです」

 使いのものは言いづらそうにそう付け加えた。
 周りの者たちが一斉に息を呑む。

 帝にお目通しがかなうなど、一般貴族でもそうはないことである。
 それが、まさか、本日初めて姿を見せた童部に許可されるなんて、前代未聞の事態だ。

「いえ、このような者、御前(ごぜん)に連れて行くわけには参りません」

 龍星がそう言い切るのは至極当然。