「では、とりあえず明日。
毬の方向性が確定してから、お会いする段取りを組もう」
「そうか、会ってくれるか」
ほっとしたように雅之が笑う。
「お前からの頼み、断れるはずがない」
龍星はさらりと答えた。
「……毬も、御台様からの頼みとあっては断れぬのかな」
雅之は、小さな姫の葛藤に想いを馳せて呟いた。
「あれも、何か手を打たねば。
そもそも、あの計画には無理がある。
妻を思うがあまりの暴走というか」
あの男にも困ったものだ、と、龍星はのんびり呟いた。
雅之にしてみれば、皇室に一切の敬意を払わない物言いをする龍星の方が「困ったもの」に思われたが、そこを押し問答してもどうにもならないと過去の経験でよく分かっているので、そこはあえて問いたださずに話を進める。
「無理?」
「千が妊娠していないと思わせておいて、ある日突然御子(みこ)の誕生を皆に知らしめても、誰も千の子であると納得などするまい」
「確かに」
当然といえばあまりに当然のその考えに、雅之は目を白黒させ思わず言葉を漏らす。
「……あの席でそう言えば良かったではないか」
一見正しそうなその言葉ではあるが、龍星は呆れた目線を雅之に送る。
雅之が御所の中でどう立ち振る舞って仕事をしているのか、一度見てみたいものだ、とつくづく思う。いや、知らぬが華――かもな。
毬の方向性が確定してから、お会いする段取りを組もう」
「そうか、会ってくれるか」
ほっとしたように雅之が笑う。
「お前からの頼み、断れるはずがない」
龍星はさらりと答えた。
「……毬も、御台様からの頼みとあっては断れぬのかな」
雅之は、小さな姫の葛藤に想いを馳せて呟いた。
「あれも、何か手を打たねば。
そもそも、あの計画には無理がある。
妻を思うがあまりの暴走というか」
あの男にも困ったものだ、と、龍星はのんびり呟いた。
雅之にしてみれば、皇室に一切の敬意を払わない物言いをする龍星の方が「困ったもの」に思われたが、そこを押し問答してもどうにもならないと過去の経験でよく分かっているので、そこはあえて問いたださずに話を進める。
「無理?」
「千が妊娠していないと思わせておいて、ある日突然御子(みこ)の誕生を皆に知らしめても、誰も千の子であると納得などするまい」
「確かに」
当然といえばあまりに当然のその考えに、雅之は目を白黒させ思わず言葉を漏らす。
「……あの席でそう言えば良かったではないか」
一見正しそうなその言葉ではあるが、龍星は呆れた目線を雅之に送る。
雅之が御所の中でどう立ち振る舞って仕事をしているのか、一度見てみたいものだ、とつくづく思う。いや、知らぬが華――かもな。


