「悪ふざけよりタチが悪い」
龍星が言い捨てる。
「――龍は悪くないわ。
それに。アイツのため――というよりは、お姉様の為、なのよね?」
毬は噛み締めるように言った。
いくらお腹に自分の子供がいると言っても、帝が千ごと守ろうとしているのは事実だ。
「道剣に依頼したのが、右大臣というのは誠なのだろうか?」
雅之が質問の形で、噂の一つを吐露した。
右大臣高階定成(たかしなのさだなり)には、毬と同い年の娘がいたはずだ。
入内させたいに違いない。
もっとも、三つ年上の兄はすでに御所勤めをしており、出世の方も順調だ。
定成はそのずる賢いところから、陰ではキツネとよばれていた。
賢いキツネがそこまでの危険を冒すだろうか。
「俺としても右大臣殿ではないと思うが、まあ、明日からの道剣の取り調べに期待するほかないな」
毬は無意識に爪を噛みはじめた。顔色も心なしか悪くなってきている。
「毬、久しぶりに起きて疲れただろう。
早めに休むと良い」
それを目ざとく見つけて、龍星が言う。
「まだ大丈……」
龍星は有無を言わせず、ばさりと毬を抱き上げた。
ここで、毬以上に照れているのが何故だか雅之だったりするのである。
龍星が言い捨てる。
「――龍は悪くないわ。
それに。アイツのため――というよりは、お姉様の為、なのよね?」
毬は噛み締めるように言った。
いくらお腹に自分の子供がいると言っても、帝が千ごと守ろうとしているのは事実だ。
「道剣に依頼したのが、右大臣というのは誠なのだろうか?」
雅之が質問の形で、噂の一つを吐露した。
右大臣高階定成(たかしなのさだなり)には、毬と同い年の娘がいたはずだ。
入内させたいに違いない。
もっとも、三つ年上の兄はすでに御所勤めをしており、出世の方も順調だ。
定成はそのずる賢いところから、陰ではキツネとよばれていた。
賢いキツネがそこまでの危険を冒すだろうか。
「俺としても右大臣殿ではないと思うが、まあ、明日からの道剣の取り調べに期待するほかないな」
毬は無意識に爪を噛みはじめた。顔色も心なしか悪くなってきている。
「毬、久しぶりに起きて疲れただろう。
早めに休むと良い」
それを目ざとく見つけて、龍星が言う。
「まだ大丈……」
龍星は有無を言わせず、ばさりと毬を抱き上げた。
ここで、毬以上に照れているのが何故だか雅之だったりするのである。


