「呪符……?」
呪符とは、呪いの文句が書いてある木の札のことだ。
この時代、もちろん【呪い】はただの言葉ではない。きちんとその力を発動することが多い、厄介極まりないものであった。
その存在価値は、武器や武具に相当し、時にはそれを上回ることも珍しくなかった。
「誰がそんなことを?」
さすがの毬も青ざめる。
「噂では右大臣家の関与が囁かれてはいるようだが……。ここからは龍星が話してくれよ」
都人でありながら、根拠のない噂話が嫌いな雅之は龍星に助けを求めた。
龍星は実直な雅之の性格をあの手この手で確かめるのが好きなのか、困った時の癖で頭をかいている雅之を見ると艶やかな紅い唇で笑みを浮かべて話を繋いだ。
「その呪符を作り呪詛に及んだ輩は、道剣(どうけん)と名乗る陰陽法師だ。……とはいえ、これは先程明らかになった事実で、今日の昼の時点では正直自信がなかった。
毬を連れて来るか、陰陽師一人一人を尋問するか……あの男に迫られて、毬を連れて行ったこと、申し訳なかったね」
龍星は誠実に詫びた。
ちなみに龍星が言う『あの男』とは、かなりの確率で帝のことを指す。
御所勤めで高い地位にありながら、ここまであからさまに帝に敬意を払わない男は龍星くらいだろう。普通は表向きだけでも取り繕うものだ。
「やっぱりアイツの悪ふざけなのね」
毬も帝をアイツ呼ばわりして、唇を尖らせる。
呪符とは、呪いの文句が書いてある木の札のことだ。
この時代、もちろん【呪い】はただの言葉ではない。きちんとその力を発動することが多い、厄介極まりないものであった。
その存在価値は、武器や武具に相当し、時にはそれを上回ることも珍しくなかった。
「誰がそんなことを?」
さすがの毬も青ざめる。
「噂では右大臣家の関与が囁かれてはいるようだが……。ここからは龍星が話してくれよ」
都人でありながら、根拠のない噂話が嫌いな雅之は龍星に助けを求めた。
龍星は実直な雅之の性格をあの手この手で確かめるのが好きなのか、困った時の癖で頭をかいている雅之を見ると艶やかな紅い唇で笑みを浮かべて話を繋いだ。
「その呪符を作り呪詛に及んだ輩は、道剣(どうけん)と名乗る陰陽法師だ。……とはいえ、これは先程明らかになった事実で、今日の昼の時点では正直自信がなかった。
毬を連れて来るか、陰陽師一人一人を尋問するか……あの男に迫られて、毬を連れて行ったこと、申し訳なかったね」
龍星は誠実に詫びた。
ちなみに龍星が言う『あの男』とは、かなりの確率で帝のことを指す。
御所勤めで高い地位にありながら、ここまであからさまに帝に敬意を払わない男は龍星くらいだろう。普通は表向きだけでも取り繕うものだ。
「やっぱりアイツの悪ふざけなのね」
毬も帝をアイツ呼ばわりして、唇を尖らせる。


