砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「もうお腹いっぱい!」

 毬がポンっとお腹を叩いてお茶目に笑う。野に咲く一輪の花を思わせる愛らしい笑みだ。

 お膳の上にはまだ食べ物が残っているが、病み上がりの身体にしては食べた方だろう。

 龍星は白魚のような指で、毬の髪を撫でた。

 膳を下げる華が甘やかし過ぎだと非難の視線をぶつけてくるが、龍星は涼しい表情で流す。
 厳しく躾けるのは親の仕事だろうし、龍星は毬の親代わりになる気は微塵もなかった。


「お話ししてくれる?」

 二人の食事も終わったのを見届けて、毬が口を開く。

「あまり気が進まないけど、毬がどうしてもと言うなら」

「どうしてもっ」

 これが帝が用意周到に張り巡らした罠の一環だとしても、聞かないわけにはいかなかった。