パチリ、と帝が苛々した様子を微塵も隠さず扇子を閉じる。

「龍星、何も伝えておらぬのか?」

 叱責するような強い口調。

 龍星は涼しい表情で、しれっと頷く。

「ええ。既にお伝えしたとおり、私としては、このお話を積極的に受け入れるつもりはありません」

 強い口調できっぱりと言い切った。

「龍星。
 この依頼そなたにしたのではない。あくまでも千の妹、毬への依頼だ。
 勅旨でないだけありがたいと思え。
 左大臣殿が気に召さぬのは存じておるが、このままでは我が御子(みこ)どころか千やひいては毬にまで災いは降り注ぐこと必至ぞ」

「それまでに、私が敵を暴いて倒します」

 粛々と答える龍星。

「いくら都随一の陰陽師といえども、龍星一人で片付けられるような問題ではないと言っただろう」

 帝は口調を荒げる。
 既に、この件でだいぶ参っていることが明らかだった。