砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 むしろ、息を呑んだのは偶然周りに居合わせた人々だ。

 人嫌いで有名な龍星が、姫君をその腕に抱き寄せているのだ。それも公衆の面前で。


「こんなところに独りでいたら、攫われますよ」

「龍が攫って」

 柔らかい声に毬は瞳を開けて、冗談めいた口調で答えながら龍星の胸に頬を寄せた。


 この迷いや不安ごと、龍星が攫ってくれればどんなに良いだろう。

「いいよ。目を閉じて」

 毬が素直に目を閉じると、ふわりとした柔らかい何かに包まれた気がした。