馬舎を抜け出した毬は一人、東河まで歩いてきた。

 すれ違う人たちの目が痛い。

 普通の姫はこんな良い着物を来て独りで出歩いたりはしないので、いたしかたないとも思う。

 西の空はゆっくり橙色に染まっていた。


 ……どうしたら良いのかしら。


 毬は胸の奥の痛みに堪え切れず瞳を閉じる。


 男の子になりきれず
 姫にもなりきれず
 何か芸を身に付けているわけでもなく

 ただ、他人を振り回してばかりの日々。