「なかなかの集中力と練習量だ」

 やや離れたところでそれを見ながら、翁が毬に囁いた。

「そうですね」

 毬は深く頷く。

「彼は天才肌だと言われているけど、努力あってこその才能だね」

「そうですね」


 毬は雅之から目を放さずに頷いた。

 引き締まった筋肉。
 突き刺さるような鋭い眼差し。
 いつもの雅之とは、全くちがう――


 近づき難い空気を纏った雅之が、更に幾度も矢を飛ばす。



「遠原殿」

 手持ちの矢が尽きた時、助言のため翁が声を掛けた。

「はい」


 雅之が振り向いた時、もうそこに毬の姿はなかった。