「……龍星、今後二度と帝と毬を近付けないでよ」

 千がため息混じりに警告する。

「むしろ私の方こそ、姫をこちらにお呼びたてしないようお願いしたいところです」

 龍星が憂いを帯びた口調で応え、固まったまま動かない毬の手にそっと自分の手を重ねた。

「龍……」

 毬は言葉が続かず、鯉のように口をパクパクさせている。

「大丈夫ですよ、姫の気にすることではありません。深呼吸出来ますか?」

 龍星は千の手前、丁寧な言葉使いで毬に語り掛ける。

 毬は言われるがまま数回深呼吸を繰り返し、ようやく我を取り戻した。


「……帝が……」

「忘れれば良いわ」

千が動揺している毬に言い放つ。

「……そうさせていただきます」

毬は小さな声で答えた。