砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「ほら、噂をすればなんとやらよ。このざわめきは龍星殿ね」

「え?帝じゃなくて?」

「あら、皆、帝には見馴れているもの。
 遠原殿が来られる時も騒めくのだけれど、龍星殿は格別なのよ。
 容姿端麗だし、あの冷たく落ち着いた表情は却って女心をくすぐるものよ」

 ざわめきは波のように大きくなり、帝と龍星が入ってきた。

「姉妹二人仲良く盛り上がっているようだね」

 帝の声に千が人払いして御簾をあげる。

「もちろんですわ」


 毬の耳はしかし、二人の会話など耳に入っておらず、その瞳は龍星に釘付けだっだ。

 公の場に居る龍星の姿を見るのはこれが初めてだ。


 整った顔に浮かぶ表情は、いつもより一際冷めて、どこかつまらなそうでもあった。

 それなのに。

 龍星は毬を見た途端、その紅い唇にとろけるような甘い笑みを浮かべたのだ。


 毬は思わず耳まで朱に染める。
 心臓は、とくんとくんとうるさいほどの音を立て始めていた。