「毬、わざわざ呼び出して悪いわね」
「いえ。御台様におかれましてはご機嫌麗し……」
「そんな堅苦しい挨拶は結構よ、毬」
千は毬の挨拶を無遠慮に、しかし親しみを込めた声で止める。
「今は屋敷を出ているんですって?」
「はい。先の桜の鬼騒動以降、陰陽師の安倍様にお世話になっております」
「まあ、そうなの。
龍星殿が誰かと共に暮らすなんて、とても想像がつかないわ」
「やむにやまれず仕方なく、ですわ。きっと」
毬の投げやりな言い方に、千は涼しい声で笑う。
「毬は相変わらず恋心が分かってないわね。男の子たちと野山を駆け回ってばかりいるからよ。
たまには女房たちの恋の話を聞いてみなさいな。
掛けてもいいわ。
あの方がまったくの下心もなしにあなたを住まわせるはずがなくってよ」
「いえ。御台様におかれましてはご機嫌麗し……」
「そんな堅苦しい挨拶は結構よ、毬」
千は毬の挨拶を無遠慮に、しかし親しみを込めた声で止める。
「今は屋敷を出ているんですって?」
「はい。先の桜の鬼騒動以降、陰陽師の安倍様にお世話になっております」
「まあ、そうなの。
龍星殿が誰かと共に暮らすなんて、とても想像がつかないわ」
「やむにやまれず仕方なく、ですわ。きっと」
毬の投げやりな言い方に、千は涼しい声で笑う。
「毬は相変わらず恋心が分かってないわね。男の子たちと野山を駆け回ってばかりいるからよ。
たまには女房たちの恋の話を聞いてみなさいな。
掛けてもいいわ。
あの方がまったくの下心もなしにあなたを住まわせるはずがなくってよ」


