毬は大急ぎで着替えると、待たせてあった牛車に乗った。
牛車の中でも、二人は黙ったまま。普段は決して流れない重たい空気に包まれていた。
毬は扇子で顔を隠しながら、千姫が居る部屋へと向かった。
「御台様、左大臣家の毬様をお連れしました」
雅之が頭を下げて報告する。
御簾(みす)の向こうでパチリと扇子がなる。
「遠原殿、大儀であった」
澄んだ女性の声。
雅之は正しく一礼すると、毬の方をちらりとも見ずに出ていった。
牛車の中でも、二人は黙ったまま。普段は決して流れない重たい空気に包まれていた。
毬は扇子で顔を隠しながら、千姫が居る部屋へと向かった。
「御台様、左大臣家の毬様をお連れしました」
雅之が頭を下げて報告する。
御簾(みす)の向こうでパチリと扇子がなる。
「遠原殿、大儀であった」
澄んだ女性の声。
雅之は正しく一礼すると、毬の方をちらりとも見ずに出ていった。


