砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 雅之は息を呑む。

「キツネって。
……妖狐?」

「八つ尻尾がついてたから、そうかもね」

 ことさらに怖い低い声で問いただされるので、意地になって冷たく返す。

 雅之は頭を抱えた。

「……毬、俺の前ではともかく龍星にはそんな風に答えちゃ駄目だ」

「どうして?」

 すっかり拗ねた気持ちに取りつかれた毬は、簡単に気持ちを切り替えることもできず、不貞腐れた態度をとってしまう。

 雅之は、これはもう自分の手には到底負えない、と思い、一つため息を吐くと毬を見据えた。


「分かった。俺が関与しても仕方ない。毬のお好きにどうぞ。

 それはともかく、とりあえず、御所まで来てくれる?さる方がお呼びだ」

 険のこもった声で雅之は言い捨てて歩きだす。牛車は安倍邸の前に待たせていた。

 毬はただ黙ってその、雅之の広い背中を追った。