砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「毬っ」

 背中から呼ばれた毬は、我に返って振り返る。
 
 心配そうな顔をした雅之が、息を切らしていた。

「雅之、どうしたの?」

 毬は不思議そうに首を傾げる。

「どうって」

 あまりに無防備過ぎるその態度に怒りを通りすぎて呆れた雅之は、がくりと肩を落とした。
 龍星はよく身が持つなと感心さえしてしまう。

「勝手に屋敷を抜け出したら、心配するのは当たり前」

「だってキツネに呼ばれたんだもん。無視できないじゃないっ」

 頭ごなしに怒られた毬は、つい勢いに任せて強い口調で言い返した。