目が覚めた龍星は、身体を起こそうとして、自分にしがみついている毬に初めて気が付いた。
 そっと手を外し身体の向きを変える。


 夕べのことを思い出して、苦笑しつつ、隣でまだ寝息を立てている毬をそっと抱き寄せた。


 寝顔は無垢なお姫様にしか見えない。
 しかし、その心のうちにはたくさんの悩みや哀しみを抱えているのだ。

 少しずつでもそれを打ち明けて欲しいと願う。
 彼女がこの小さな身体にどんなものを抱えていたとしても、それを包み込めるだけの人でありたい――とも。


 龍星は懐にしまっていたかんざしを取り出し、毬の髪に差し、そっと唇づけた。


 まもなく都の夜が明ける。