砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「そうだな。
 雅之が来てくれて本当に良かったよ」


 妖狐の言葉に惑わされ、我を見失っている間に、妖狐は姿を消した。置き土産に幻霧を残して。


 雅之が来なかったら、龍星も霧に呑まれて幻に翻弄されてしまっただろう。

「今日はゆっくり休むといい」

 雅之は言うと立ち上がった。

「もう帰るのか?」

 夜はまだこれからなのに?

「ああ、お姫様によろしく」

 雅之は酒に手をつけないほど疲労している龍星を気遣い、早々に安倍邸を後にした。