砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「龍星、大丈夫か?」

 事の顛末――妖狐が、息子に逢いたいと願う律を唆し、夫を殺害させたこと。それを霊の仕業だと思わせるよう、律を龍星の元に寄越したこと――を語り終えた龍星を、雅之が心配そうに見る。

「ああ」

 龍星は珍しく疲れた顔で頷いた。


 ここは安倍邸。
 いつも二人で酒を酌み交わす場所に腰をおろしていた。
 酒はもちろんあるが、二人とも口をつける気にならない。

 西の空が紅く染まっており、時折烏の姿が見える。


 毬は部屋で眠っていた。
――正確には、龍星が解毒剤を飲ませて眠らせた――


 毬に強引にしかも必要以上に深く唇づけたのは、彼女のため、なんかではない。自分の欲望のせいだ。
 雅之が安部邸に来てなかったら、あのまま毬を抱いてしまったかもしれない。


……俺もあの男(帝)と大差ないな。


 龍星は心の中で自嘲気味に呟いた。