砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「誰を庇う嘘?」

 帝の瞳が鋭く光る。
 一見、我儘で子供染みているだけのように見えて、それなりに頭は切れるらしい。


 龍星は思わず口が綻びそうになるのを抑え、無表情のまま言葉を紡ぐ。

「別に。
 そういうわけではありません。仮に調査しても、もうどうしようもないということです。

 黒幕は妖怪ですし、殺人犯は壊れてしまいましたから」



「ふうん、じゃあいいか」

 帝はつまらなそうに言い捨てた。


「では私はこれで」

 踵を返した龍星の背中に、声が響く。




「でもさ、龍星。
 壊れてない人間なんて、実在する?」



 それは、帝の本心か。
 はたまた妖狐の幻霧が見せたまやかしか。


 龍星の心はいたずらに掻き回されていた。