砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「雅之、顔を上げてよ。せっかく検非違使の格好してるのに、意味ないじゃん」

 帝は馬から降りて、苦笑する。
 その姿は、若く将来有望な貴族そのもので、御所の奥にいる時とは別人のように生き生きしていた。


 考えてみれば、帝にお目通し適う人の方が圧倒的に少ないわけで、容姿を知られていないということは、お忍びには適している立場なのかもしれない。


「ああ、これは申し訳ございません。しかし帝、勝手にこのようなことをなさいますと……」


 くどくどと説教をはじめる雅之に、帝は肩をすくめ龍星に視線を移した。
 その腕の中にはぐったりした毬がいる。