砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 龍星は瞳を閉じて、神経を集中させた。
 何の迷いもなく、印を結び、呪を唱える。


 龍星の気合いの入った声が響き、気味の悪い重苦しい霧がゆっくりと消えていく。



「毬っ」

 龍星は急いで屋敷から出ると、庭の隅に倒れている毬を見つけ抱き上げた。


 真っ青な唇。
 硬く閉じた瞼。
 身体はひどく冷たくなっていた。


「やあ龍星。なんの騒ぎ?」

 予想外の、そして場違いなほど軽い声に弾かれて顔をあげる。


「……帝」


 驚きの声を上げたのは、雅之の方が早かった。