砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 それなのに龍星は唇を噛み締めたまま、抱きしめている手を放さない。

「お願い、龍っ」

 毬は困った顔で訴えた。その瞳が徐々に潤んでくる。

「龍を困らせたくないの、ねぇ、お願いだからっ」

 毬の双眸から涙が溢れる。

 龍星は優しくその頬を撫でながら囁いた。

「困らせて」

「――龍?」

 思いがけない言葉に、毬は目を見張る。

「困らせてくれれば良いから」

「でもっ
 龍のおうちには居られないならっ」

「戻ってきて。毬が居ないと淋しくて眠れない」

 毬にだけ聞こえるように、小さな声で龍星が囁く。

「本当?」

 似つかわしくない発言に、毬は思わず問い返す。

 龍星は真直ぐに彼女の瞳を覗き込むと
「本当だよ。だから、一緒に帰ろう」
 と耳が震えるほど甘い声でそっと答えた。

 
 毬は涙に濡れた顔で、ようやく、くすりと笑みをこぼした。