籠に揺られて左大臣邸へ戻る毬の心は冷え切っていた。

 小さい頃から大人の都合で振り回されてばかり。
 自分が男だったら、ここまで振り回されなくても良かったのではないか?

 そう考えると、さらに口惜しさで胸がいっぱいになった。


「姫様、大丈夫ですか?」
 
 楓が心配して声を掛けてくれる。


「まだちょっと、体調が思わしくないみたいなの。帰ったらすぐ寝床を準備してくれる?」

「畏まりました」



 左大臣邸に久々に戻ってきた毬は、寝具に潜り込んで、一人、号泣せずにはいられなかった。