両親が亡くなったことは、すごく悲しい。 でも、夢乃の傷付いた心が癒されることはなかった。 父に犯され、それを知っていた母は自分を置いて逃げてしまった。 いわばトラウマと言うわけだ。 それからはうまく人と付き合えなくなってしまったのだ。 「…ごめん」 ポソリと呟くようにそう言って立ち上がろうとした時、腕を捕まれた。 思い出す。 あの日、父に捕まれた腕に残った感触を…。 今度はバシッと音がするほど強く伽新羅の手を払った。