あのうしろ姿、だれかに似ているような……。栗色の髪を無造作にセットした感じの……だれだっけ?
「……とにかく、行かねぇから。親父にもそう言っといて。親の都合になんか振り回されたくねぇから」
その声からは、めんどくさいという感じが伝わってくる。
そして、しばしの沈黙の後、「……じゃあ、切るから」という声がして……。
――ピッ
「はあ……」という深いため息とともに、電話の切れた音がした。
……なんか、聞いちゃいけないものを聞いてしまった気がする。親の都合、とか言ってたし、家庭の問題だよね。
これは聞かなかったことにして、彼が出て行くまでこの図書室に隠れていた方がよさそう。
あたしは少し罪悪感を抱きながら、そこから奥に移動しようとした……。


