6月の中旬。


もうすこしで、夏が来る。


「━━━…ねぇ悠くん、わからないとこがあるんだけど教えてくれる?」


「……うん、俺でよかったら教えるよ」


「あっ、ずるい!悠くん、あたしにも教えてー!」


「いいよ、みんなに教えるよ」


ソイツの一言で、周りの女子達が騒ぎ出す。


あたしの通っている学園には、“王子様”と呼ばれる人物がいる。


名前は矢吹悠(やぶき はるか)。


栗色の髪に、整った顔立ち、そして優しい性格。