『いいかい、なかったことにすればいいんだ。』
唖然、絶句。そんな表情を僕はしている。
『…すまない、お前に聞いた僕が馬鹿だったな。』
『聞いといて失礼だね。』
作詞家気取りは口を尖らせた。
『それが出来るならこんな所まで歩いて来ていないさ。』
『ふふっふ、言葉を知っているじゃないか。』
『あいつも一緒に落ちたのならもう少しまともに歩ける気がするんだ。』
『まとも、ねえ。結構じゃないか。悪くないが…』
『何だ?』
『いや、何でもない。君は矛盾を持っている。大切にしなよ。良いところへ行けるさ。』
『お前はこれから何処へ行くんだ?』
『ワタシは気にしなくていいさ。ここの機械たちに遊んでとせがまれているんだ。』
『……………そうか。』
『この子達は君のようには行けないから、待つしかないんだよ。』
そう言って動かない馬の頭を撫でる作詞家気取りを残して錆び付いた夢の跡地を出た。
