何故、あいつは落ちて消えないのだろうか。
年老いた影はなにも見えないと言っていたのに。

敷地を囲う錆びたフェンスの上にぽんぽんと様々な姿の淡い光が並んでいる。
しっとりと濡れている落ち葉の上を歩く。
夜風の中にほんのりと鉄のにおいが混ざっている。
ここはかつて夢を魅せた場所。
錆び付いた汽車のレール。
色褪せた三角のテント。
ひび割れた街灯。
壁の剥がれ落ちた城。
今はカタチだけを残し、その行く末を見せている。
これも誰が為に在ったものなのだろう。

『ハロー悩める少年、そんなものを持って何処へ行くんだい?』

亀裂の入った馬を象る乗り物の上に、嫌な色の髪を持つ人影があった。