町を出てしばらく行くと広い草原にたどり着いた。
暗い空の下それの光できらきらと草花が輝いている。

『ハロー悩める少年。』

聞き覚えのある声が聞こえる。

『そんなものを持って何処へ行くんだい?

振り返ると見覚えのある馬を象った乗り物に小さく座る作詞家がいる。
『…お前こそどうしてそんなものを持って来た。』
『ん?あぁこれの事?持って来たんじゃない、引きずってきたんだ。重いからね。』
『聞きたいのはそういうことじゃない。通りでこびりついた灰や花びらや地面で擦ったキズが多いはずだ。』
『ワタシこそ聞きたいのはそんな言葉じゃないよ。』
作詞家は持っていた鵞ペンをくるくると回してからその先を僕に向ける。

『お前にとってはそんなものでも、僕にとっては大切にしたい物だったんだ。』
『おぉ、引っ掛かったじゃないか。』
嬉しそうにクスクスと笑う。
『何に引っ掛かったって言うんだ。』
『最初に会ったときは何も持っていなかったからね。』
『……砕けてしまった。大切にしようとしていたのに。』
荷物の中から砕けたそれをいくつか取り出す。
『君がやったのかい?』
『いいや。僕が砕いたわけではない。』
『ふぅん。何故、怒らなかった?』
その問いの答えをそれを見つめながらゆっくりと考えてみる。

何故、怒らなかった。