『見えない…?あれもか…?』
僕は上を見上げてみせる。
建物で切り取られた細長い夜空にあいつがいる。
『……………………』
夜盗は後ろによろめきながら空を見上げる。
『何も、見えねえ…。何が、あるって言うんだ…!何があるって言うんだよこんな暗闇の世界にこれ以上何があるって言うんだ!!!』
そう言うと夜盗は持っていたそれを震えた手で強く握りしめ、砕いた。
欠片が、僕の目の前を舞う。
『あっ…』
『望めばとか頑張ればとか願いだ祈りだ…勝手なことばっかり言いやがって…どうしても手に入らないじゃねえか!!!期待させるようなことばかり…言いやがって…』
途切れ途切れに言葉を発しそしてしゃがみこんだ。
その背中はとても小さく小さくまるで子供のようだった。
『お前は…』
『うるせえ!!!もうどっかいっちまえ…』
『あいつが、消えてしまったのか…。』
