星の軌跡



『ハッ、ろくなもん入ってねえな。』
『だからそう言ったじゃないか。』
『ボロボロのノート、インクが切れかかってるペン、おとぎ話の本…くっだらねえのばっかり入れやがって。おォ』

本のしたに隠れていたそれが顔を出す。

『持ってんじゃねえか。こんなもんどこで見つけてきやがった。』
取りかえそうと手をのばすが、夜盗はそれを高く上げかわす。
『返せよ、大切にしろと言われたばかりなんだ。』
『てめえこんなもんが大切なのか?ハッ餓鬼だなァ』
『お前はこれがなにか知っているのか?』
『馬鹿か当たり前だろ。』
呆れたような目をしてゆらゆらと僕の頭の上で揺らす。
『それの、名前はなんだ?』
『はァ?てめえ名前も知らねえのか?』
『知らない。』
『とんだ馬鹿だな。こいつの名前は………名前は……』

夜盗はそれを見つめたまま顔をしかめる。
少しの間、沈黙が包んだ。