随分歩いてきた。
どこから来たのかさえ最早わからないくらいに。
背中の荷物が次第に重くなっていくのがわかった。
小さく薄汚れた小さな町にたどり着く。
闇夜で一層暗い路地裏に対照的な真白い猫が入っていった。
路地裏に入ると先に細く風景が見える。
ここを越えたらまた景色が変わるのだろう。

『よォ餓鬼。それを置いていきな。』
煉瓦の壁に寄りかかる大きな人影が言った。
『生憎、欲しがるようなものは持っていない。』
『嘘ォつくんじゃねえよ。』
『お前は何だ?』
『盗賊だ。盗むのと壊すのが仕事だ。』

夜盗は気だるそうに体を揺らしながら僕に近づく。
顔を鼻の上まで布で隠し、右目はつぶれている。

『盗賊?』
『あァ?てめえ盗賊も知らねえのか?』
『いや…やることが小さいなと。』
『あァ!?何か言ったか!?』
『何でもない。』
『いいからよこせよ!』

盗賊は無理矢理僕とリュックを引き離す。
そして中身を冷たいコンクリートの地面へとぶちまけた。